「もっと早く対応していれば。」
看護師として現場で働いている方は、そう悔やむこともしばしばあるのではないのでしょうか。
例えば、人手の少ない深夜勤務のイレギュラーな事態。
医師となかなか連絡が取れず、早く対応したいのに医師の指示を仰がなければいけないためできることが限られてしまう時間が生まれてしまいます。
患者さんは待ちぼうけです。
そんな板挟みの状態に何度も悩まされました。
そんな状況を少しだけ変えることができる特定看護師という方がいます。
今回は特定看護師とは何か、どうしたらなれるのか見ていきたいと思います。
(文:小児科ナース10年の新米主婦)
特定看護師になるには
まず、法律上「特定看護師」という資格はありません。
国の研修制度ですが、研修を修了して何かの資格を得られるわけではないのです。
特定行為とは、診療の補助であって、看護師が手順書により行う場合には、実践的な理解力、思考力及び判断力並びに高度かつ専門的な知識及び技能が特に必要とされる38行為とされています。
特定行為研修は、38行為を21区分に分けた特定行為区分ごとに実施されます。
特定行為区分ごとの研修を修了することにより、その特定行為区分に含まれる特定行為を手順書により実施することができます。
特定行為に係る看護師の研修制度の普及・活用にあたっては、「特定行為研修を修了した看護師」を略して「特定看護師」と呼称することは問題ないとされています。(日本看護協会HPより)
それでは、特定行為区分と特定行為研修について詳しく見ていきましょう。
<特定行為21区分>
区分は以下の21区分に分かれます。属する38行為については、日本看護協会の看護師の特定行為研修制度ポータルサイトに詳しく載っていますので参照してください。
<特定行為研修>
1. 受講資格
看護師免許を所有していること。
区分が様々なので、指定研修機関によって実務経験の定めがあったり、所属施設の推薦などが必要なところもあります。
実務経験は3~5年程度を求められるところが多い印象です。
2. 受講場所
指定の研修機関や病院などで受講できます。
受講者が所属する施設が指定研修機関の協力施設となれば所属施設で実習を行えることもありますので、詳細は指定研修機関にて確認してくださいね。
指定研修機関は厚生労働省のウェブサイトや日本看護協会の特定行為研修制度のポータルサイトにて受講したい区分がどこで受けられるか検索できますので活用してみてください。
3. 所要期間、費用
研修期間は受講する区分数などにより様々ですが、およそ6ヶ月~24ヶ月です。
指定研修機関により異なりますので各指定研修機関にてご確認ください。
費用に関しては、指定研修機関や研修を受ける区分別科目によりますが、およそ30~250万です。
費用に関しては、条件を満たせば教育訓練給付や人材開発支援助成金といったサポートもあります。
地域や所属施設でも補助がある場合もあるので、該当するか確認し活用するのも手ですね。
4. 研修内容
特定行為研修は、全てに共通して学ぶ「共通科目」と、特定行為区分ごとに学ぶ「区分別科目」に分かれています。
研修は、講義、演習、実習があり研修機関によっては講義や演習をe-ランニングで受講できるところもあり、また働きながら受講が可能なので所属施設とも相談や調整も必要とされます。
「共通科目」では、臨床病態生理学やフィジカルアセスメント、臨床薬理学などの科目を250時間受講します。
研修を修了すると研修終了証が発行されます。
特定看護師の仕事内容
では特定看護師の研修を終えたら、仕事はどのように変わるのでしょうか。
基本的に私たち看護師は、医師の指示のもと医療行為や薬剤投与を行います。
そのため状態が変わると、その都度報告し指示を仰がなければなりません。
例えば、栄養及び水分管理に係る薬剤投与関連の区分科目の研修を取得した場合、脱水症状に対する輸液による補正の特定行為が含まれています。
本来であれば、脱水を疑う症状があればまず医師へ報告、医師から輸液の指示があれば指示通りに輸液を投与するという流れになりますが、手順書に該当する範囲内であれば手順書に沿って速やかに輸液を実施し医師へ報告という流れが可能となります。
もちろん速やかに医師へ報告することが望ましいのですが、処置中や手術中だったり、なぜか夜間が多かったり、やむを得ないですが医師の指示を受けるまでに時間を要することも多々あります。
時間としてはそれほど変わらないかもしれませんが、脱水でぐったりしている患者さんが少しでも早く楽になるかもしれません。
ドレーン管理関連では抜去の特定行為がありますので、医師の外来終了後まで待っていたドレーン抜去が日勤帯に行えて早期離床に繋がるかもしれません。
他の対応中だった医師の手を止めることが減るかもしれません。
病院だけでなく、在宅や施設など医師が少ない場面でも質の良い医療ケアの提供につながります。
また給与に関しては、資格ではないので一概には言えませんが所属施設によっては手当がつく可能性もあります。
特定看護師に向いている人
より高度な医療行為を行うことになりますので責任感が一層必要とされます。
・特定区分に自分が取得したい区分がある方
・しっかりとアセスメントができ的確な判断ができる方
・医師が少ない場で患者さんのために迅速な対応をしたい方
これらの方は特定看護師に向いていると思います。
行為そのものだけでなく、所属施設からの期待や看護の向上に関する役割を担うことも増えると思います。
おわりに
資格ではありませんが、更に十分な知識と経験、高度な技術が保証される特定看護師において自分はもちろんのこと、患者さんにとっても、周囲のスタッフにおいてもプラスになることは間違いないでしょう。
判断や高度な技術が求められるので不安もあると思いますが、区分の選択肢はたくさんあるので自分が活かしたい分野がある方は考えてみてもいいかもしれませんね。
出典:厚生労働省HP(https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000077114.html)
日本看護協会HP(https://www.nurse.or.jp/)
日本看護協会、看護師の特定行為研修制度ポータルサイト(https://www.nurse.or.jp/nursing/education/tokuteikenshu/portal/index.html)
※掲載した情報は記事作成日(または更新日)時点のものです。制度・法の改定や改正などによって最新のものでない可能性があります。
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